コラム
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被害者救済へ大きな一歩! 建設石綿被害救済法成立
2021年6月9日、建設労働者の石綿(アスベスト)被害に対する救済法が参議院で可決し、成立しました。これは、5月17日に、全国各地の建設現場で、石綿を吸い込み肺の病気となった元作業員らが提起した集団訴訟で、最高裁判所が国と建材メーカーの賠償責任を認める判決を言い渡したことを受けたものです。
この法律の適用対象は、
1 昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までに石綿の吹付け作業に係る業務
2 昭和50年10月1日から平成16年9月30日までに屋内作業場であって厚生労働省令で定めるも
のにおいて行われた作業に係る業務
に従事した方で、
① 中皮腫
② 気管支または肺の悪性新生物(肺がん)
③ 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
④ 石綿肺か管理2、管理3もしくは管理4である者またはこれに相当する者
⑤ 良性石綿胸水
に罹患した人です。
労働者、個人事業主の別を問わず、厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業主も含まれます。
上記被害者あるいは遺族(相続順位ではなく、労災の支給順位と同様)に該当した場合には、以下の給付金が支
給されます。
1 石綿関連疾患により死亡した人 次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれイ又はロに定める額
イ ロ以外の人 1300万円
ロ 石綿肺により死亡した人 1200万円
2 前号に掲げるもののほか、中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚にかかった
人、石綿肺にかかった人又は良性石綿胸水にかかった人 1150万円
3 前2号に掲げるもののほか、石綿肺にかかった人 次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれイ又はロ
に定める額
イ じん肺管理区分が管理3である人又はこれに相当する人 次の(1)又は(2)に掲げる区分に応
じ、それぞれ(1)又は(2)に定める額
(1) 指定合併症にかかった人 950万円
(2) (1)以外の人 550万円
この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されると決まっており、現時点においては令和4年4月から、労基署を窓口として受付が開始されるのではないかと考えられています。
建設アスベスト訴訟は、2008年5月に提訴されて以来、全国各地で提訴され、以来13年間にわたって、戦われてきました。この間、当初の原告の多くは病に倒れ、亡くなっていきました。このたび、遅ればせながらようやく国に対する請求については、不十分な点も残しつつ(屋外作業者が除外されている等)、形になりました。まだ、石綿を含有する建材を製造していたメーカーに対する責任追及は残りますが、この制度が石綿関連疾患で心身両面にわたって苦労されている元労働者の救済につながることを期待しています。