コラム
column
インバウンドの「明」と「暗」(富士山の素晴らしい景観を目にして)
コロナによる旅行自粛が解除され、日本国内での旅行が活発になっています。そんなこともあり、3月10日(日)から12日(火)にかけて、当事務所の事務所旅行を実行しました。春先なら雪をいただいた富士山を見ることが出来るだろうとの思いから「眺望絶景の富嶽十六景」と題するJTB・旅物語のパック旅行に事務所員全員で参加しました。
3日間の日程中、2日間は快晴の好天に恵まれ、お目当ての富士山は、各所から存分に眺めることが出来ました。とりわけ、清水港より船で湾内に出て、有名な葛飾北斎の「波の絵(波間の富士)」こと「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」のイメージを頭に叩き込んで、海上からの富士山を見ることが出来たのは印象深いものでした。さすがに、北斎の絵のような構図で見ることはかないませんでしたが・・・。
さて、表題の件ですが、「河口湖の湖畔」や「忍野八海」での、圧倒的な外国人ツアー客の数と客を迎える土産物や飲食店の様相に端を発した印象によるものです。両地共に、私の印象では、日本人客1割・外国人客9割といった感じで、まるで外国の観光地を日本人ツアー客が訪れているかの感を受けました。
河口湖畔よりの雄大な富士山の眺めは素晴らしく、また忍野八海の清らかな湧き水は心を涼やかにしてくれる感のものではあったのですが、それを眺めたり見たりする足元や近辺が、本来の日本的な情景と異質に変容してしまっているとしか思えない状況は、残念との思いでした。立食い用の飲食物を売る店が通りに並ぶ様は、どこにでもある一般的な屋台通りの感であり、これらの存在と人混みが、忍野八海の本来の魅力であるはずの「清らか」・「静寂」といったものを奪ってしまっているなと思え、違和感を覚えざるを得ませんでした。
インバウンドによる来客の増加が、観光業による経済的潤いを当該地に与えるものであること自体、喜ばしいことであり、これは「明」と言えます。しかしながら、あのような混雑・喧騒をもたらすことは、長い目で見れば、当該地の魅力を喪失させてしまい、結果としては観光地としての衰退を招くことにならないかと危惧を感じた次第です。これは、インバウンドの「暗」の一面です。せっかく来日してくれた外国人観光客が、本来の日本の良さ・魅力を感じ取ってもらえるような観光地の有り方に対する方策を考えていかねばならないのではないかと感じた次第です。