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通行地役権のあらまし

弁護士 浅野喜彦

1 はじめに

たとえば、自分の土地から公道へ出る近道として、あるいは、他の通路が狭すぎて車が入れない場合にその代替ルートとして、日常的に隣人の土地を通行させてもらうというケースがあります。このとき、お互いの関係が良好なまま維持されている間はよいのですが、ひとたび関係が悪化し、隣人に通行を妨害されてしまった場合は、どうすればよいのでしょうか。

これは要するに、長年その土地を通行してきたという事実をもって、通行者が法的な権利まで取得したと言えるのか、という問題です。そして、「法的な権利」の候補として一番に考えられるのが、今回のテーマ「通行地役権」です。

2 通行地役権はどんなときに認められるか

通行地役権が成立するパターンは、2つあります。1つは当事者間の合意、もう1つは時効の成立です。

通行地役権の合意は、契約書など明示のかたちをとることがベストですが、黙示の合意でもよいとされています。ただ、その場合は様々な間接事実から黙示の合意を立証していくわけですが、これが意外に難しいのです。リーディングケースとされる裁判例は、黙示の合意が認められる要件として、通行の事実や所有者の黙認だけでは足りず、通行地役権を設定することが合理的であると考えられるような「特別な事情」を要求しています。「特別」な場合にだけ認められるわけですから、単に好意で通行を認めている場合などは除外されるのです。

時効による通行地役権の成立も、単に一定の期間、通行を許されていたというだけでは認められません。民法によれば、通行権が「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができる」状態を維持することが必要です。最高裁判例はこれを具体化し、「継続」の要件を充たすためには、その土地上に通路を開設すること、また、その開設は通行者側の土地所有者によってなされることが必要だと言っています。これを字義どおり解釈するなら、通行地役権の時効取得はかなり難しいことになるでしょう。

3 隣地が売買されたら

最後に、通行地役権の対象となっていた隣地が売買等で第三者に譲渡された場合、通行者は新しい隣地所有者にも通行地役権を主張できるのか、という問題があります。実は、通行地役権は、あらかじめ法務局に登記しておかない限り、原則として新しい隣地所有者に対抗できません。そして、現実には、地役権の登記がなされていることは、きわめて稀でしょう。

ただ、最高裁判例は、継続的に通路として使用されていることが「客観的に明らか」であり、かつ、新所有者がそのことを「認識していたか又は認識することが可能であったとき」は、例外的に新所有者の権利を制限しています。土地を購入する人は、通常、一度は現地の状況を確認するでしょうから、通路利用の実態が物理的状況などによって「認識することが可能」なほど「客観的に明らか」であったと言えれば、通行者側にも勝ち目があるわけです。

4 おわりに

以上のように、通行地役権の紛争は、一義的に結論が出るわけではなく、裁判所の総合的判断に委ねられることが多い分野です。日常の通行となれば、生活に直結する問題ですから、なるべく争いが起こらないよう、予防措置をとっておきたいところですね。