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ヤングケアラーの支援に関する法改正

弁護士 森 亮介

以前のコラムで、ヤングケアラーについて紹介しましたが、ヤングケアラーの支援の強化に係る法改正が行われ、 2024年6月12日に施行されましたので、今回は、法改正の経緯及び概要について説明します。

 

ヤングケアラーについては、家族の世話のために自分の時間が取れないなど、その責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響があることが指摘されていました。国においても、支援体制構築等の取組推進や社会的認知度向上のための広報啓発などの取組みが進められてきました。しかし、ヤングケアラーの支援に関する法制上の位置づけがないことに加え、都道府県と市町村の役割分担や、支援の実施主体として、誰が、どのような支援を行うかが明確ではなく、地方自治体ごとに、取組みの進捗状況や支援内容にばらつきがありました。そこで、ヤングケアラーへの支援を強化するため、子ども・若者育成支援推進法が改正され、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義して、支援の対象を明確化し、国・地方自治体が支援に努めることが規定されました。

 

ヤングケアラーの定義にある「過度に」とは、子どもにおいては、子どもとしての健やかな成長・発達に必要な時間(遊び・勉強等)を、若者においては、自立に向けた移行期として必要な時間(勉強・就職等)を奪われたり、ケアに伴い身体的・精神的負荷がかかったりすることによって、負担が重い状態になっている場合を指します。支援の対象年齢は、18歳未満に加え、進学や就職の選択など、自立に向けた重要な移行期を含む若者期を切れ目なく支えるという観点から、おおむね30歳未満とされています(-状況によっては、40歳未満の者も対象となります-)。

 

子ども・若者育成支援推進法では、国・地方公共団体などの関係機関等の責務や支援内容について、以下のように規定されています。

<責務>

 ・ヤングケアラーの状況の把握

 ・相互に連携を図り、速やかに適切な関係機関等へ誘導

 ・関係機関等が行う支援について、地域住民に周知

<支援内容>

    ・相談、助言又は指導

 ・医療及び療養を受けることの援助

 ・生活環境の改善

 ・修学又は就業の援助

 ・社会生活を営むために必要な知識技能の習得やその他援助

 

今回の法改正は、ヤングケアラーを支援する法的根拠ができ、その支援の普及や強化に寄与する点で、重要な意味を持ちます。今後は、関係機関等が、ヤングケアラーの把握方法や効果的な支援の在り方について検討を進めるなどして、支援が広がっていくことを期待しています。また、ヤングケアラーの支援を進めていくには、子ども・若者が家庭環境のことを相談しやすい環境づくりや、学校関係者や周囲の大人が理解を深め、担っている家族のケアの負担に気づき、ヤングケアラーを必要な支援につなげることが重要となります。今回の法改正をきっかけに、一人で責任や負担を抱え込んでいる子ども・若者が、安心して家庭環境のことを相談できる社会になることを願っています。